うたプリビギナーの初入国日記/『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』を観た

あらすじ
映画館で号泣するのが趣味のわたしは今回の自宅閉じ込めにより娯楽を奪われ味気ない日々を送っていたが、動画配信サービスに契約したことがきっかけで、数年ぶりにアニメおよび声優ジャンルに足を踏み入れる。ある日、中のひと目当ての軽い気持ちでApple Musicのうたプリリストを聞くと、その日のうちにアニメとシャニライに手を出してしまった。3日後、シャニライにログインしたわたしはうたプリが10周年を迎えたことを知る。もしかして、かの有名なマジLOVEキングダム劇場上映ワンチャンなのでは? 脳直ツイートをしたわたしに、心優しいフォロワーがささやいた。実はまだ上映してるところがあります。
キスよりすごい歌は実在するのか。その謎を解明すべくうたプリ歴1週間のどビギナーは上映館へと向かった……。

 

 

全編ライブという情報を得ていたため、予習必須と考えてセトリを確認し、Apple Musicサブスク対応曲のみではあるがプレイリストを作成した。公式PVを観てパフォーマンスシーンがCGであることを把握し、演出にトンチキの気配(褒め)を察知。映画鑑賞というよりドームライブのライビュに行くときのテンションでいればいいことを理解した。あとふつうにシャニライが面白かったのでせっせと遊んでいた。1期完走するつもりが、時間の都合で12話までしか観れず。なおHE★VENSのみなさんはシャニライにいないため顔と名前が一致していません。

 

開演前に音也のアナウンスがあって、テニミュみたいで懐かしいって思う。応援上映みたいなのが常設されている作品だったのだなということを知った。オープニングムービーは世界観を作りつつ気持ちを盛り上げる。途中でハンカチを落したのは誰だろう。顔と名前を出してくれるの優しいなあ。わくわくで雑感が多い。

 

1曲目「ファンタジック☆プレリュード」。ずっと聞いていた曲がライブバージョンになるとめちゃくちゃ上がる。全編通して何度も、ライブはやっぱり最高だと思いました。早くライブに行きたい。知ってる曲はもちろんだけど、知らない曲でもちゃんと入っていけるようにできていて、席に座ったままゆらゆら体を揺らして楽しんだ。っていうかみんなが踊っているよ。アイドルみたい…アイドルか…。

 

PV観たとき既に感じたことなんですけど、3曲目「GIRA×2★SEVEN」でキューティーナギが腰でリズムとってるのを抜いてるカットがあるじゃないですか。自分はもともとCGのよさがよくわからなくて、どちらかというと苦手だったんですよね。でもこのカットで、生身の身体が踊るところを見るのと変わらないんだなってわかった。だからこのセトリの中で大事に感じてる曲です。でもごめん、出だしのワイヤーで吊られてくるくるしてやつ笑っちゃった。

 

3グループ1曲ずつパフォーマンスして、MCへ。みんなが前の人へのファンのリアクションに食い気味に話し始める中でうまいこと待ちを入れてから話しだす一ノ瀬トキヤ大先生。さすがです。ここのMCの白眉は翔くんでした。みんなのことは俺が守ってやるからな!という旨のことを翔ちゃんに言われて、恋にすら落ちる心地だったからです。アイドルって守ってくれるんだって思った。自分がこれまで想定していたアイドル像は与える者であって、前に立ってくれる人っていうイメージはなった。だからすごく新鮮だったし、遠く離れていても同じ地平にいるように感じた。翔ちゃんはもしかしたらそこまで考えてなくて、夢中にさせるよとか最高の思い出作りましょうみたいなことを自分のできる表現に置き換えて言っただけなのかもしれないけど、その人なりの伝え方をしてくれることはファンにとって特別に嬉しいことなんだなと再確認しました。そして他の人が話してるときがっつり体向けて聞いてる翔ちゃん、人間ができている。

 

次からはグループをシャッフルしたトリオでの曲。4曲目「Up-Down-Up! 」はみんな大好きポップアップから始まるダンスナンバー、この曲を生で見たいって思わせるような目の離せないパフォーマンス。音也先輩がゴリゴリに踊っていてびびる。MCでも感じたことだけど、音也はアイドルに向いている。明るくて素直で元気が一番!みたいなキャラクターは、普段フィクションを楽しむときまったく琴線に触れない性質なんですが、音也にはステージに立ってきらめきを降り注ぐのが似合うし、アイドルになってくれてありがとうって思った。ところでここまで夢中で気づかなかったが、このライブフル尺じゃないな!? もっと聞きたいのですが…。

 

5曲目「エゴイスティック」、那月歌うますぎワロタ(GRANRODEOには別作品でお世話になっています。いつもありがとうございます)。衣装がけっこうフェティッシュで、おそらくレザーなんだろうな。レザーは景気がいい。

6曲目「Feather in the hand」、清純派アイドル大集合みたいな曲。水の演出でゴンゴンに殴ってくるのに清純派を逸脱しないバランス感覚。

7曲目「相愛トロイメライ」は自分がうたプリに来た動機たる神宮寺さんがいるトリオ。きらめきを抑えたシックな黒い衣装は品のいいセクシーだが、背景もけっこう黒いのでダンスがやや判別しづらくそれが不完全燃焼でした。でも照明の色味が強かったので現地の肉眼なりオペラなりだともっとよく見えたんじゃないでしょうか。現地組どうですか? MCの時に気づいたけどロングブーツだった。いいですね。

8曲目「Colorfully☆Spark」。コーレスが楽しいポップでキュートな曲。龍也さんに憧れてる翔ちゃんにとって、目指す姿はキュートよりもパワフルで、かわいいよりかっこよくありたいんじゃないかなって思ってた。だからこういう3人でこういう曲をやるのは不本意な気持ちもあるんじゃないのかと。けど、憧れをなぞるだけじゃなく、求められることに従うだけでもなく、自分だけのアイドル像を作った結果が、かわいいパフォーマンスも楽しいって大声で言える今の翔ちゃんなんだよね。かわいいをやり切る翔ちゃんは世界一かっこいいよ。

9曲目「カレイドスコープ」。と、飛んだ…。

 

ここでシャッフルチームごとのMC。清純派アイドル聖川選手突然の耳掛けに戸惑う。褒められて嬉しそうな聖川選手。レンレンチームがお芝居パート入れてくるのめちゃくちゃアイドルのライブっぽい。アイドルライブに行ったことはないが。一番印象的だったのは一ノ瀬さん。彼って顔全体で笑ったあとにもう一段階目元で笑うよね。1期でいちばん時間を割いてバックボーンをやってくれたキャラだから、特別な思い入れがある。よかったねよかったね。しかし宮野真守は歌も芝居もうまいなあ(周知の事実)。

 

グループに戻って10曲目「愛を捧げよ~the secret Shangri-la~」。この登場の感じ、3rdS立海で見た(見てない)。なんて言うフォーメーションなのかわからないけど、立ち位置がばっちり決まっていてメンバーがちょとずつ違う振りをするやつが好きなので気持ちよかった。雷の演出のリキが強くて腰が引け気味になる。

 

11曲目「FLY TO THE FUTURE」。振り付けががっつりついてなくて、メンバーが自由にやってる箇所が多く、「目が足りない」を生む見応えがある。Aメロ前の間奏でおそらく蘭丸さんがギター弾く振りをやっててなんかぐっときた。サビの「FLY TO THE FUTURE」を何度も何度も一緒に歌える作りになっていて、いかにもライブという旨みのある曲。

 

12曲目は楽しみにしていた「ウルトラブラスト」。ウルトラブラストすごい好きなんですよね。ユニゾン長めで、こういう音圧はなんだか懐かしい。神宮寺さんと聖川さんがシンメなことに途中で気づいてハートが火を噴いた記憶があるが幻覚だったような気もする。やっぱりパフォーマンスがつくと曲だけ聞くのとは受け取り方がぜんぜん変わってきます。ワンフレーズごとにメンバーが入れ替わるところも視覚的に楽しい。そして、翔ちゃんが音源よりも歌がうまくなっていて大変感動しました。2〜4期をすっ飛ばしたからこれは予想に過ぎないんですけど、ステージ映えするキラキラのアップテンポや日常に寄り添うバラードをやってきたST☆RISHが新しく見せた、パワーのある熱い曲がウルトラブラストなんじゃないかなと。物理的爆発の馬鹿みたいな多用にはちょっと笑っちゃうものの、ラスト前にもうひと盛り上がりできる、期待を裏切らない曲。

 

ここでラスト前のグループごとのごあいさつ。誰の発言か忘れちゃったんだけど、HE★VENSの誰かが「エンジェルであることを誇れるグループにする」って言っていたんだよね。それがすごく泣けた。わたしは若手俳優を熱烈に推していたことがあって、推しの周りで大きい仕事をつかんで舞台上で華やかに活躍する彼らの姿を何度か見た。そういうときにいちばん強く思ったのは、この子のファンはいま報われたなあということだった。ひがみはなかったけど、いいなあって思ってたんだよね。もちろん報われるために推してるわけじゃない。でも推しが活躍するところを目に焼き付けて満たされたい。表現はちょっと違うけど、HE★VENSはそういう気持ちをわかってくれるグループなんだなって思った。…というのを真面目に考えていたんだけど、リップ音を投げ売りする神宮寺先生に笑ってしまいました。好きだぞ。

 

13曲目は本編ラスト「マジLOVEキングダム」。各グループが別のグループのマーク?シンボル?を手で作っててこれこれ!(巻き舌)になった。もう終わっちゃうんだなって寂しい気持ちになってるところにトロッコが飛んだから、それどころじゃなくなってしまう。愛してるよ、トンチキ演出! たしか間奏だったと思うんですけど、ドームの屋根が開いて夜空が見えて、翔くんが流れ星を見上げているシーンが美しかった。余韻が残ったままエンドロールへ突入し、ライブ中のスチルとかバックステージとか見せてくれるのは手厚いな、などと思っているところに袖から覗く七海を見せてくる鬼畜。いちばん泣きました。このカットの意味を想像できただけで、1期を見てきて本当によかったと思う。またED曲もいいんですよね。壮大で深い。一ノ瀬トキヤソロ名義の曲ではなく、われわれのトップスター宮野真守が歌ってくれているわけで、アイドルたちへの祝福感が増強される。

 

エンドロールが完全に終わってからアンコールに入る演出。14曲目「Welcome to UTA☆PRI KINGDOM!!」、Tシャツで出てくるのは醍醐味のひとつ。手の振り方ひとつとってもパーソナリティやアイドルとしての個性が出るし、花道上での絡みははいはいこれこれ!の気持ちになるのだった。以降、がんばって思い出そうとしてもどうやって終わったのかの記憶がない。気づいたら音也が終演アナウンスをしていて、静かに日常に戻ってきていた。

 

新しいものに触れるとき、わたしはいつも人生をすっかり変えてしまうような衝撃を望む。命を燃やすきっかけを求めている。だからこの入国でもひそかにそういう劇的なインパクトを期待していた。けど、そこで得たのは自分の人生におけるエポックメイキングな「キスよりすごい歌」に触れるという体験ではなく、キスよりすごい歌を届けるために走り続ける彼らの、輝かしいひとつの通過点を一緒に過ごすという穏やかな興奮だった。手元にはこれからも彼らを見続けたいというささやかで幸せな願いが残った。彼らのアイドルとしての未来に祝福を。また次のライブ会場で会いましょう。

とはいえ、本日2回目の入国を予定しているので、命に火をつけられたことは確かなのだが。