2022年4月の記憶

今日行く舞台のチケットを発券するためにコンビニに行ったら、そもそもチケットを購入していなかった。何を言っているのかわからねーと思うが おれも何をされたのかわからなかった…

4月は公私ともに忙しく、観劇ツイートが1つもできなかった。たくさん観劇できたというのも忙しさに拍車をかけていたのだが、だとしてもチケットを買ったつもりになるのはまずい。

特別書き残したいものを抜粋して少しずつ感想を書いておく。

 

 

つかこうへい十三回忌特別公演「新・熱海殺人事件」ラストスプリング

初熱海! 初紀伊國屋ホール! 予定が合わずチケットを取っていなかったのだが、直前で休みが取れたので観に行けた。

わたしの知らないところでこんなに面白いことが行われていたのか、とかなりショックを受けた。もっと早く観ればよかったのにって。つかこうへい作品にもこれまで縁がなく、演劇の流れの中でどういう位置づけなのかもまったく不勉強なのですが、すごく好きだったし、恐らくこれから何度もバージョン違いの各作品を観ていけるだろうと思うと楽しみで仕方がない。

何年か前に、90年代に書かれたある戯曲の再演を観に行ったことがある。例えば同じ90年代の映画を映像として観るのとは違って、舞台は上演することで「今このとき」に起こっていることになるから、そのときは価値観を悪い意味で古く感じてしまうという経験をした。当時の色を再現する意図の作品もあるだろうし、どこまで当世的に演出(ないし潤色)するべきなのかは一概には言えないと前置きした上で、今作は「今」をネタに組み込む按配が心地よかった。その笑いがあったから、「今このとき」に心からそう思って言ったらコンプラ抵触まったなしの台詞たちが、かえってフィクションであることを強調されて聞こえるのだと思う。こういうふうに存在することができるんだ、と名作の再演に対する考え方が大きく変わった。

一色洋平さんは今回初めてお芝居を拝見したのだが、フィジカルの強さに圧倒された。

 

 

梅棒 14th WONDER 『おどんろ』

リベンジ公演! 昨夏のチケットを取っていたのでなおさら無事に上演されて嬉しい気持ち。梅棒は昨年末の『風桶』以来2回目。

去年から少しずつ多和田くんの舞台を観に行くようになって、まだどんなものを見せてくれる人なんだろう?という段階にあったんだけど、今回初めて何にも考えずに「か、かっこいい…」という状態になって帰ってきた。表情で踊る人を見ると胸が熱くなって、ああわたしいま生きてる!と思って泣く。

お話としては、まさかこういう別離があるとは思わず、まったく心の準備をしていなかったものだから、悲しみというよりも嫌だ!という気持ちで泣いてしまった。泣きすぎた。

梅棒を2回観て、対立する複数の派閥が和解してさよならするというのが基本のストーリーなのかな、と感じているところ。『風桶』を観たときもセリフなしで観客に意図したとおりのキャラクター像をつかませ、ストーリーを仕立てるという手法に驚いた。そして、音楽のあり方がすごく面白くて、ダンスを見せる要素の一部になっているときもあれば、歌詞が突然セリフとして機能することもある。2作の中で最も記憶に残っているのは、『風桶』での「神田川」の「怖かった」の使い方。

 

 

キ上の空論#15 『朱の人』

どうしても劇団スポーツ「怖え劇」を思い出してしまうが、それとは真逆とも言えるストーリーであり、結末である。

今でもすごくわからないことがあって、たぶん、この作品を観に来た人の多くは演劇が好きだと思う。実際に演劇を作った経験があるかどうかは別として。そういう性質を持った観客に向けて、演劇によって狂いそれでも演劇から抜け出せない人間を見せつけて、どうしようというんだろう、というのが疑問なのだ。そう思うということはつまり、演劇そのもの、またはそこで描かれる何かに救われたいと思っているということの証左でもあって、それはそれで作り手からすれば違うのかもしれないけれど…。

わたしは演劇を作る側にいたことは一度もないし、やってみたいと思ったことも一度もない。それでも、この作品を観たあとに稽古場で後輩を叱責している夢を見たくらいには引きずられている。そちら側に行ったらもっと違う見え方をするのだろうか、という興味は少しだけある。恐ろしいことに。

一番印象に残ったのは音楽。地震のシーンは本当に怖かった。聴覚からの情報に支配される感覚があった。

 

 

しあわせ学級崩壊 リーディング短編集#1 A

仕事終わりに焦らず行ける時間に公演があるのはとても有り難い。

歌でもないしラップでもないしリーディングであることは確実なんだけど、音楽と一緒になって小説がリズム感で入ってくる感じが新鮮で面白かった。今回は普段と毛色が違うとのことなので、普段のゴリゴリのEDMの方も行ってみたい。

上岡実来さんが読んだ宮沢賢治「マリヴロンと少女」で泣いてしまった。他の3作が独白に近い形だったのもあって、最後に会話を楽しめる作品が選ばれているのがより印象を強めたんだけど、それだけじゃなくて、少女が尊敬する相手に感情をぶつけたがる痛いくらいの必死さと、それを否定するわけではないけれどももっと高い視点からものを見ているマリヴロンの歌うような諭しの両方が心地よく膨らまされたリーディングがすごくよかったと思った。

 

 

他に、青年団「S高原から」(押さえておくべき名作のひとつをようやく押さえられた達成感)、ゴジゲン第18回公演「かえりにち」(帰りの状態になるまでの道のりを永遠に引き伸ばす気持ちへの共感、いつの間にかリラックスして観ている)、劇団競泳水着「グレーな十人の娘」(個々のやりとりや出来事は面白かったけど全体で見ると事件と動機はつりあっているのか?と思えてやや物足りない。シアタートップスはトイレまで行くのがつらいと学んだ)も観ました。

5月は少し余裕があるので映画も観に行きたいと思う。