あなたを知っていく物語/プリロワと綾小路葵

あらすじ
現実に疲れたわたしは気を紛らわすため、リリース時にDLしたもののチュートリアルも読み切れず一度諦めていたプリロワを真面目にプレイすることにした。



※プリロワと綾小路葵(と時々さのれおくん)についてとりとめなく書いたメモです。
※個別ストーリーの内容には言及しませんが、ストーリーの進行による綾小路葵との心理的距離感が多少反映されています。



7月21日 日曜日
推し王子は生徒会長にした。なお、ドラマ放送前の注目は尊人、ドラマ終了時点では竜ちゃんに惹かれていた。劇レジェは果音の物語だと認識しているので鑑賞後も個々の王子への感情の動きはなし。

当時の感想はこのようなことを書いていた。

映画プリレジェでいちばん泣いたポイントは自分の好きな人と自分を好きで合いそうな人から自分の好きな人を選ぶということです

果音にとって奏は手なんか届くはずのない相手だ。自分では並べないこと、住む世界が違うことは考えるまでもなく明らか。奇跡的に再会してみたら価値観はちぐはくで、それに本人も大っ嫌いなどと言ってくる。手を伸ばすとか伸ばさないとか、そういう次元の人じゃないんだよ。

それに対して尊人は自分のことを好きだと言ってくれる。自分に理想を見ていたときも、ナチュラルな自分を知ったときも、変わらず好きだと。生活の方向性だって似ている。(これは状況だけを見ての指摘にすぎないけど、兄的存在のハルに比較的気を許していることからして、年上の尊人といることは果音にとって不自然なことではないでしょう)

自分の好きな人と自分を好きで合いそうな人、どちらと一緒にいたら自分は幸せか。相手は幸せか。果音は考えざるをえなかった。考えて考えて、尊人の行動と、奏の行動があって、最後は自分の好きな人を選んだんだよね。自分で手を伸ばしたんだ。

きっと選んでもなおわからなかったと思う。自分の幸せも相手の幸せも確実なものかどうかなんてまだ言えない。でも、頭で考えるのをやめて気持ちで好きをとること、それを肯定してくれる結末は祝福だ。好きを選んでいいんだよって背中を押してくれるのが映画プリンスオブレジェンドだとわたしは思います。
別に恋愛だけの話じゃなくて。好きな服と似合う服どっちを買うかだっていい。どんなに卑近な例でもいいけれど、好きを選ぶ冒険はできないなってときがあるもの。それら全部に、自信持って選んでみなよって言ってもらえた気がして、(そしてそういう後押しが今の自分にも必要だった気がして、)よかったなあ…って泣いたのでした。


ただ、劇レジェでのさのれおくんのお芝居が魅力的だったこと、最近のさのれおくん本人の様子(Fate)を踏まえての決定だった。

劇レジェ生け花デートで、さのれおくんの照れのお芝居に撃ち抜かれた記憶は鮮烈だ。プリロワ内でテキストとして遭遇する会長の照れにも、彼のお芝居が思いのほかはっきりと重なる。プリロワについていかなかった理由のひとつに、果音がいる世界の王子たちが好きだったからというのがあった。でも実際は、ドラマ・映画の彼らを好ましく思った経験がちゃんとプリロワでもいかされていて、好感が行きどころをなくしたわけではなかった。元来恋愛シミュレーションゲームには興味がなく、今回も大してのれないだろうと思っていたけれど、実行委員長が王子に対して抱く印象を文章で読むと、自分が気づかなかった魅力に納得できて、真摯にプレイする限り必ず彼らを好きになれるように組み立てられているのがわかる。


7月22日 月曜日
そういえば、ドラマにおける生徒会はコメディ要員の側面があったことを思い出す。プリロワのメインストーリーでは各チームが満遍なく笑いや和みの要素を担っていて、神経質なまでに均質な印象だ(多くのキャラクターを平等に扱うことが求められるメインストーリーは、どんなゲームでも概ねそうだろうが)。さらに記憶をたどると、果音の名前を空で呼べたとき、会長とガブリエルは抱き合って喜んでいた。実行委員長が見ている会長は、ガブリエルとの間にさえも満面の笑みを浮かべることはないようだ。会長を理解しようとする指標としてガブリエルを外すことができず、名実ともに遠い存在に感じている。


7月23日 火曜日
ホームへ行くたび、会長は実行委員長というアバターを飛び越えて、プレイヤーたるわたしに声をかけてくれる。これから興味を持とうというひとが、現在の関係性より少し進んだ親しさであいさつをしてくれるというのは、こそばゆいけれど、だんだんと癖になるものだ。

会長のことは好きになれそうだ。王子様像を背負う宿命の奏とは異なり、会長は実行委員長をプリンセス扱いするわけではない(プリンセス扱いを否定する意図はないが、立場的にも本人の意向としても、会長と比較するなら相手は奏一択だろう)。交流と言うほどではないものの、以前からわれわれ庶民との接触経験があり、実行委員長にも女子生徒というよりまずはひとりの友人として、文化の違いを感じながらも歩み寄ろうとする。その姿勢は、偏見をもちがちなわたしからすると素直に尊敬できる。

引き出しの中にある数少ない類似システムのソシャゲと照らし合わせたとき、プリロワのストーリーには選択肢がないことに気づく。プレイヤーの意図は実行委員長の行動に反映されないのである。したがって、実行委員長は読み物の登場人物としての独立性が高い。プレイヤーが選択を通じてプリロワ世界に入り込むというよりも、確固たるテキストに感情移入することが想定されているのだろう。自分の意思で選ばなかった残りの選択肢を回収しに戻る作業も発生しないし、肯定的に捉えている。


7月24日 水曜日
ストーリーがすれ違いの段階に入ってしまい、純粋に会長がどんな言葉をくれるか楽しんでいた頃が早くも懐かしい。最後は大円団なのだろうから現在のすれ違いは関係性を深めるために必要不可欠な通過点に過ぎない、と俯瞰して回りくどい自己防衛を始めてしまうので、実行委員長の悲しみに素直に寄り添うこともできない。どうにかここを乗り越えて秋には小石川後楽園散策などを楽しみたいという厄介な願望が生まれてくる。いや、会長ほどのひとならば、紅葉狩りを都内で済ませたりはしないでしょうか?


7月25日 木曜日
進展だ! 進展した! 素直に嬉しく、Wi-Fiスポットではしゃいでしまう。


7月26日 金曜日
今のところ無課金ユーザーである。ゆえにとにかく進みが遅い。自然回復分でイベントに参加してぽちぽち親密度を高めているが、強欲なのでちっとも足りないのである。それで、朝からザラの円盤を出してきてジェネパートを観ていた。観ていたはずが、MAD CYCLONEの円盤を購入していた。久しぶりに初見のライブ映像を浴びて楽しんでいたところに、Make You Mineの「我慢できない」のさのれおくんにすっかり参ってしまった。びっくりした。

現時点でひとつ言語化できる彼の魅力は、表情の複雑さだ。劇レジェの照れも、ハナレイ・ベイの「ありがとう」も、今回のカメラアピールも、ひとつの感情が均一に乗った顔ではなかった。一瞬では理解しきったと思えないからもっと見たくなる。考えこんでしまって記憶に残る。誇張のないごくささやかな範囲で、表情の情報量を格段に増やすことができるひとなんだろう。一刻も早くヘビーでハードな映画に出て報われたり報われなかったりしてほしい。
取り急ぎUNITED JOURNEYを注文する。


7月27日 土曜日
UJは明るく楽しくハッピーで健全で、世界観も比較的平易な、初心者にも大きく開かれたライブだった。気づけば、一連のプリンスバトルプロジェクトから想定されるJr.EXILE世代への誘導のひとつにばっちりはまった形になってる(ここでは感想を割愛するが、その後さのれおくんの写真集も購入した)。


プレイしてみると、思いのほか素直にプリロワを楽しんでいる自分がいる。これは、以前のわたしが懸念していたような、果音の代わりに実行委員長(とその背後にいるプレイヤー)が王子の関心を引き受ける物語ではない。個別の恋愛ストーリーは、実行委員長と王子の恋愛モノであると同時に、他者に好意を持つ心の動きをキーにした、王子そのひとを知るためのストーリーなのだ。

既に贔屓目抜きには語れなくなっているが、プリレジェにおける生徒会長は、彼を知るにはやや不利な立ち位置だった。王子の紹介をしながら話数が進む構成で、奏の第一対抗馬に尊人がおさまったあとに語られた会長のライバル心。しかも果音ではなく奏へ強い感情を向ける王子は、誠一郎に次いで2人目である。プリロワに来てはじめて、「負けるわけにはいかないんですよ」とこぼす生徒会長の心に正面から対峙できた。8月5日時点で会長ルートは48話。もう少し時間をかけて、わたしはあなたを知っていく。