舞台の配信プラットフォーム多すぎ問題と検索性

舞台の配信チケットを購入するとき、どのように購入までたどり着いているだろうか?

自分はTwitterに常駐しているため、観たい公演があればまず公式アカウントをフォローするなりリストインするなりして、情報を見逃さないようにする。公演情報が出た時点で必ずしも配信があると分かっているわけではないから、継続して追いかけねばならない。その後、作品側がアナウンスした配信に関する説明を読み、指定されたプラットフォームで配信チケットを購入する。

インスタや他のSNSで情報を集めている人もいるだろうし、メルマガやフライヤーで知る人もいるかもしれない。しかしいずれも作品の認知ありき、作品の存在を主軸にしての購入と言える。

作品の存在を既に知っている状態をスタートにしたこの購入フローは、現地のチケットを検討する層よりも圧倒的に広い観客にアプローチしうる映像配信の特性を活かしきれていないのではないか?

 

例えば、週末暇だから映画館にでも行こうかなと思ったとき(週末暇だから映画館に行くという行為が、家で何でも観られる現代においても未だ妥当な例かどうかというのは置いておいて)。これといってタイトルを決めていなくても、映画館単位や駅単位で上映中の作品を検索ができて、観たいと思う映画を見つけられる。

舞台も、配信チケットを購入するのであればこういったふんわりした娯楽の仲間入りができると思っている。作品を知らない状態から検索できる状態を作ってあげさえすれば。

 

自分は圧倒的現地観劇大好き人間であり舞台鑑賞のために利用した配信プラットフォームはまだ2つと驚くほど少ないのですが、そのうちPIA LIVE STREAMはこういった検索に対応していてトップページからすぐに配信作品が探せるようになっている。ジャンルと公演日程(正確には、アーカイブの視聴可能期間も含むと思われる)で絞り込めていい感じだ。アーカイブの有無やチケット価格も絞り込み条件にあったら嬉しいかもしれない。

 

ところが、ここで問題になってくるのはその配信プラットフォームの数である。多すぎないか?

配信やります!とアナウンスしている作品はよく見かけるが、プラットフォームは常にばらばらだ。3大プレイガイド+αの狭い世界で生きてきた演劇ファンとしてはもう名前も覚えられない。

プラットフォームが分散していると、いくら個々のプラットフォーム単位で配信情報が検索可能になっても、観客はあちこちで検索ボタンを押さないといけなくなる。ただ検索機能を整備するだけではダメなのだ。

 

とはいえここまで乱立したプラットフォームを統一するのは難しいだろう。真に必要なのは、舞台の配信関連の情報を一挙に集約しプラットフォームの横断検索ができる、ユーザーとプラットフォームをつなぐ中間の場である。

検索の話をしているところに軟弱な検索リテラシーを露呈させて恐縮だが、先述の役割に近いことをしているサイトはおけぴオンライン番組表しか見つけられなかった。これは個人の登録によってスケジュールに反映されているようである。登録された情報は一覧可能だが検索機能はない。

ここも似たようなのやっているよ、という情報があればぜひお寄せいただきたい。使いたいので…。

 

高望みをするならば、Netflixのような動画配信プラットフォームから次に観るものを探すみたいに、鑑賞候補タイトルの情報が入手できるようになってほしいのだ。今週末生配信!とか、配信情報解禁ほやほやの近日公開作一覧!とか、スケジュールベースでリスト化してみたり。購入数だと問題になるかもしれないけど、なにがしかを基準に人気順やおすすめランキングを出してみたり。最終的にはやはり、先月特定の作品を観た人に今月のおすすめをサジェストするところまで行きたい。サジェストされたい!

配信を観るには都度課金になるし、新作映画をデジタルでレンタルするのと比べても配信チケットの価格帯は圧倒的に高い。ゆえに動画配信とまったく同じというわけにはいかないが、現地のチケットを買わない人にもっともっとアプローチできるのではないでしょうか。

 

元来、人気のある作品や話題になった作品ほどチケットが入手しづらいという弱点が舞台にはあった。公演映像の配信はそれを補う偉大な力を持っているし、配信チケットの併売がポピュラーになることでその恩恵を受けている演劇ファンは星の数ほどいる。だが、それが既に演劇を観ている人たちの中で止まってしまってはいないか。配信情報の横断検索を整備すれば、まだ作品の存在自体を知らない未来の観客にも届くものが増えるのではないか。

配信をきっかけに、舞台を観ることがもっと普通の、ありふれた娯楽のひとつになることを願っている。