雑感集2023

2年半ぶりの雑感集。

映画を観たあとに殴り書きした感想の寄せ集めです。

 

 

名探偵コナン 黒鉄の魚影

劇場で観たの紺青のフィストぶりだったんだけど、めちゃくちゃ面白かった…。(もしかして紺青って…あんまりだったのか…?)黒ずくめの組織の活動、オリジナルキャラと本編キャラの交流、人気キャラオールスター祭り、そして爆発と感情感情感情〜!という、これぞコナン映画という構成だなと思いました。

これ観終わったあと哀ちゃん………ってならない人間いないだろってくらいの全部盛りですごかった。歩美ちゃんと哀ちゃんがダブルベッドだったの見逃さなかったし一刻を争うときに布団かけ直してあげるの愛すぎる。あと…わたしが哀ちゃんに関して固定のカップリング観を持たない以上センシティブな話題ではあるんですけど…、コ←哀時空でありつつ蘭に明美さんを重ねたり新蘭を尊重してしまったりする哀ちゃんが…切なくもしっくりきたというか…。表面上の展開はクソデカ規模のいつもの感じでありつつも根底にある登場人物の感情とか関係性を蔑ろにしないストーリーになってて、これがプロの作劇、と思った。

すごい好きなシーンがあって、哀ちゃんが誘拐された後に見た夢なんですけど。ジンを恐れていることと、自分の正体がバレたときに最初に犠牲になるのは阿笠博士だと彼女が思ってることが描かれてるんですよね。自分の身と同じくらいに案じているのが阿笠博士だってことだよね…。泣いたよわたし…。

ナオミさんのパパが狙撃されるとこも良かった(良くはない)。水無怜奈のお父さんのことすっかり記憶から抜け落ちてたんですけど、そこはさすがライト層も振り落とさない信頼のコナン、丁寧な回想!  っていうかナオミさんと志保さんの関係設定がうますぎる。ここが固いから哀ちゃんとコナンのシーンも活きるし、わたしは迷宮の十字路が好きなのでけっこう高校生メンの活躍に期待するところがあるんですけど、今回はそうじゃないものを真っ向から見せる!という強い意志を感じた。

あとスマホ越しに赤井さんとあむぴが会話するのオタクが考えたやつじゃん。口に出してほしい呼称みんな使ってきたじゃん。さすがに笑いを禁じ得なかった。あむぴは何年経っても若々しいわね…(それはそう)

赤井さんといえば、自分は本編追ってないのでなんだか久々に沖矢さんがしゃべってるの聞いたんだけど、置鮎さんが完全に赤井秀一の口調でしゃべってて、声優さんってすげー!って思った(はじめてアニメ声優を認識した人?)

園子が元太光彦歩美を引率するとこの蘭とのやり取りもなんか泣いた。子どもたちといえば恒例の博士クイズ、怒る→アングリー→あんぐりと言えば口!という推理をしたが外れた(…)。

総じて求めるものが観られて楽しかったです。来年も絶対観る〜〜〜 

 

以下、緋色の弾丸視聴後の追記(配信で観ました)

コナン映画って、ストーリーの深度に年ごとにムラがある!というのに気付いた(遅)。今作の事件の根幹にあるのは復讐である。しかし復讐の背景は自白時以外に掘り下げられない。さらに、その復讐と赤井家は無関係だ。さらにさらに、赤井家内の新規の掘り下げもなく、世良とママ、チュー吉、赤井さんがそれぞれの思惑で基本的に別行動をする。この作品には、出来事それ自体の面白さ以外の収穫がない。少なくともわたしはそう感じた(由美タンとチュー吉は好きだった)。

それと比較するとサブマリンははっきりとストーリーとその他の要素に関連性がある。前提として、犯人側にジンアンチという属性と外見的特徴以外の情報がほとんどなく、それがかえってその人の掘り下げを不要にしている。その上で、犯人ではなくシステムを作ったナオミの方に時間を割く。ナオミを知ることで志保さんの幼少期を知ることができたし、何より蘭がコナンに新一の面影を重ねるように、哀ちゃんに志保さんの面影を見る人がいるという描写が生まれた。(ここがまずめちゃくちゃいい、あるべき描写だと思う)

そして繰り返しになるがナオミの主張。年齢による差別をなくしたいというのはコナンという作品全体に関わる内容であるし、哀ちゃんとコナンが活躍する今作のシナリオに直結する。彼女の主張がストーリーの一瞬の面白さやシステムを作った動機の補強にとどまらないのがよい。またこれも言及済みだが、キールがあの場にいることでナオミパパの狙撃が単純な脅しに止まらないところもよい。これも瞬間的な盛り上がりのためだけの展開ではないというのが明確だから、物語への没入感が持続する。

赤井さんとあむぴのシーンはサービスサービス〜!っていう態度が丸出しなんだけど、哀ちゃんの話とは完全に切り分けた作りだから、何も考えずに楽しむので正解な気がする。

サッカーボールの使用ノルマ達成方法も、発光によって潜水艇の影を映し出すというきれいなタイトル回収になっていてよかった。

前回お前はまずこれについて話せよ!というのを書き忘れてたんですけど諏訪部さんがゲスト声優で沸きました。美味しいキャラだったね。

 

おとななじみ

LDHを通ってからというものこういう若者向けのキラキラ青春映画に強い耐性がついて、むしろ積極的に欲するときさえある。(センセイ君主面白いから見てね)

みずきくんの顔はずっとかわいいんだけど春にはぜんっぜん感情移入できないしそんなにかっこいいとも思わない、だがそれがいい! フラッシュモブのところやっぱよかったな。原作にもあるんかな。アイドルをキャスティングする意義があるシーン。かっこいいとは思わないけど、お母さんの命日にお花くれるとこは泣いた。

一方で楓役の久間田琳加さんはずっとかわいいうえに役もかわいくてめちゃくちゃよかった。お芝居も上手でギャグ調がそこまで気にならないしお洋服もかわいいしメイクも髪もずっとかわいい。伊織にどぎまぎしてるところなんかくそかわですわ。お手本のような八の字まゆ毛。しっかりメイクしてるときとそうじゃないときがはっきり分かれてて奇妙なリアリティーを感じたんだけどメイク薄くても常時かわいいですわ。身長164センチあるらしい。えっじゃあ小さく見えたけどみずきくんも普通に身長ある!? 最後のシーンの「だめ」がかわいすぎた。

春に感情がないということは当然伊織推しなんですけど、この世の大半の人間は春と付き合うより伊織と付き合った方が幸せになれると思う(巨大主語)。俺の仕事も見てほしいって言われて会場行くとレセプション向けのキメキメスーツの伊織が出てきたら失神してしまう。

荻原利久さんって勇征くんと「美しい彼」をやってる子なんだね。他の出演作よくわからんかったけど、わたしの好きそうな邦画に出ていそうな顔だから未来のどこかでお芝居を観ることがあるでしょう。

最近の少女漫画って無理やりキスとかわざとらしい壁ドンとかないんですね。ものすごく観やすかった。あと、同時に2人の男の子が気になってどうしよ~!?だけじゃなくて、大人になることのひとつの象徴として仕事との関わり方が思ったよりも丁寧に描かれてて、いい恋愛映画だなと思った。紙資料わたされて休日に稼働して私用PCでデータ分析させられんのは反吐が出ましたが(口悪)。宍戸美和公のキャスティングが良かった。

 

最後まで行く

なんというか…わたしがほとんど経験したことのないジャンルの映画だなと思った。スリリングでエキサイティングで笑えたし、状況の整え具合もわざとらしすぎずちょうどよかったんだけど、でも、観終わったあとにどういう感情を抱いたらいいかわからん…。この手の映画、何を思うことを想定して撮られている…?

綾野剛の、出世のために結婚した興味のない女の両親への手紙を食卓で聞いているときの表情が好きで、こういう質感の映画で急にいい塩梅の綾野剛が出てきたな…と思ってたら、すごい速度で狂気にびたびたに浸っていってやっぱこういう感じね!とむしろ納得した節がある。あのシーンって靴踏まれてるんじゃなくて玉握りつぶされてる!?(やめな!)岡田准一の肉体から繰り出される暴力は妥当〜って思うんだけど、綾野剛の細長い体から突然タコ殴りが出ると、怖い。シンプルに。

岡田准一のお芝居ってほぼ観たことなかったかも。SPで止まってたかも。こういう感じの役似合うな。あと柄本明が出てきた瞬間、スクリーンの質感変わったな。毎回似たような印象持ってるな。わたしが映画撮るときも柄本明にラスボスやってほしい(?)
黒羽くんどこに出てたかわからんかった…ちゃんと顔知ってるのに。

尾田(刺青の若い男)の電話に応答する岡田准一の「ぉっ」のところいちばん笑った。あの周辺の同僚刑事とのやりとりすごく好きで、な〜んだこの作品ってほんとはここのバディものなんだ!っていう安心感、返してほしい。ドラム缶落ちてきたとこビビりすぎて心臓止まるかと思った。

ときどきすごくきれいな、力の入ったカットがあって、でもきれいに見せたい=びっくりポイントか!?と思ってしまって映像には集中できなかったかも…。

なぜ観に行ったかというとタイトルがめちゃくちゃかっこよかったからで、5・2の7音かつ動詞で終わるのかっこよくないですか、メインビジュアル出たときから絶対観るべって思ってたんだけど、予告の感じからあ〜〜ってなってて、でも押し切って観ちゃった。
知らんジャンルの映画観れて愉快だった、酒飲みながら金曜の夜に観るのにぴったりだと思う。でもやっぱどういう感情になればいいかわかりません!

 

怪物

情報が出たときからずっと楽しみにしていた。初めて予告を観たときはショッキングな話なのでは?と思ったし、実際苦しいシーンもあったけど、身構えていたような苦しさではなく(例えば「怒り」みたいな爆発的な暴力性はない)、構成と映像の力もあって、光を放つ美しい土地に軟着陸したような結末だった。

フィクションの中で特に同性同士の関係性の描かれ方を好きだと言おうとするときに、消費の側面を疑われるのではないか、ということが不安で息苦しく感じることが増えた。うまく作品の好きなところを切り分けて言語化できればいいのだけど、常に潔白を証明しながら話せるかと言われるとそうではないし、かわいいかっこいいみたいな平易な興奮をここでも書く。でも、とにかく子どもたちを消費しようという気持ちはないし、映画の話がしたくて書いている。

早速本筋から逸れた。これについてはいずれまとめるとして、記憶のあるうちに、思ったことをバラバラに書く。

安藤サクラのお芝居って「ある男」のときは全然わかんなかったんだけど(そもそも作品がはまらなかった)、今作は序盤ですぐ掴まれる感じがあった。というか誰にフォーカスが当たっているときもちっとも退屈しなかった。ベランダから火事を見るシーン。湊が持ってきたアイスを二人で分け合う。湊に手すりから乗り出さないようにと言ったそばから自分が身を乗り出して、消防隊員にがんばれと叫ぶ。この時点で母のキャラクターと二人の関係性がだいたい見えた。

湊のベッドに腰かけて話すシーン、湊は可哀想じゃないって言って手を握って来るところがぎゅっと切なくなった。母親が口にする普通の家族に自分がなれないかもしれないって不安や罪悪感や反発を感じで居る一方で、母親のことを切り捨てたいわけじゃない。

瑛太高畑充希が付き合っているというのがよかった(悪い感想)。明るい髪色のショートカット、充希ちゃんによく似合っていた。

最初、校長室で飴舐めてる堀先生見て強い怒りを感じたな…。そんなことするな!という行為ではあるんだけど、背景を知ると同情がわく。大切な人から教わった行動で心を守ろうとすること。シンプルな仕組みだけど、どうしても心が傾く。

瑛太、かっこよかったな(最悪の感想)。例えば、「最高の離婚」や保険のCMで演じている役なんかでも、瑛太はどこか気持ち悪い、悪い意味での真面目さが前面に出るお芝居を求められることが多いなと、出演作を網羅しているわけではない顔ファンながら感じているのだが、今作でも外から見た堀先生はやはり気持ち悪いと思われているらしい。しかしわたしは今回の瑛太のビジュが好きで…正直堀先生目線のパートの半分くらいは瑛太かっこいいな…しか考えられなかった。真面目に見ようとしていたのに、どうしてもそうなってしまう。無精ひげをはやしているシーンなんかは声を上げそうになった。週刊誌に載った自分の記事の誤字に付箋を貼っているところなんか最高だった。いや、ここに対する感情は、わたし自身が悪い意味での真面目さを気持ち悪く露呈しているだけなのかもしれないが。

校長先生(田中裕子)が刑務所に面会に行くところ、泣いてしまった。堀先生は明らかに、湊の母から見たときと主観のときとで見え方が違うように演じられているんだけど、校長先生は誰の目線から見たときも硬い殻に閉じこもっているような、程度の差こそあれ底が見えない人物であれという一貫した演出がされていると思っていて。その中でふっとむき出しの人間性を、配偶者の前でほんのささやかに見せるというお芝居の機微に感動したのだと思う。

全体を通して、これからどうなってしまうんだろうってずっとハラハラしていたんだけど、ある意味前半の大人たちのごたごたは台風の日に堀先生が謝りにきたことでなんとなーく収まってしまう。シングルマザーのモンスターっぷりも、週刊誌までやってきてすっかり大事になった堀先生への誤解も。ビチョビチョになりながら子どもを探すというあまりにもドラマチックなシチュエーションが、少なくとも観客の脳内で事件の大きさを小さくする。

子どもたち2人がすごくよかった。単純な対比として、湊は声変わりが済んでいて、星川くんはまだである。普段子どもと関わることがないからあまり意識したことがなかったが、5年生くらいの時期はひとによって成長の差が激しいのかもしれない。星川くんが小柄なのも相まって、別々の人間であることが強調されるように思う。(キャストの生年を確認したら、湊役の子が2個年上だった。明らかに意図的な成長の差を見せたいキャスティングだろうから、いいなと思った)

秘密基地の電車の中で転校の話を聞いた湊が思わず茶化してしまったあとの一連のやり取り。星川くんのことをどういう意味で好きなのかをいよいよ自覚する、二人で見つめ合っているシーンもよかったんだけど、そのすぐ手前の、いなくなったら嫌だよってなんの装飾もなく、本当に幼い子どもみたいに素直な言葉で星川くんにすがりつく湊がよくて、驚いた。家でも学校でも、ひとりでいるときですら少し大人びている湊という子をじっくり描写してきたからなんだろうけど、そのさらけ出し方があまりにも無防備で、すごくびっくりした。

結婚して家庭を持つとか、男の子なんだから、みたいな言説。観客として見ているせいで、くだらないこと言う人ってまだいっぱいいるよね、そういうリアリティだよねって都合よく咀嚼できてしまうんだけど、湊たちはまだ小学5年生なんだよ。そんなもん押し付けられたらたまったもんじゃないよ…。

怖い映画なのかと思った、と冒頭で書いたけど、その当事者にとって自分は人と違う人間なのかもしれないという不安は十分怖いものだろうし、後付けではあるけれど2時間ずっと(楽しい方向ではなく、苦痛を伴う)ハラハラした気持ちで見守らないといけなかったことって、体験としてこの作品がやりたいことにマッチしていて、よかったのかもしれない。

誰もが手に入れられないことは幸せではなく、みんなが手にできるものが幸せなんだっていうメッセージは、正直あんまりぴんとこなかったんだけど、でも「当たり前の普通の家庭」を押し付けられている湊にとって重大な助言になるだろうということは想像できる。

湊と星川くんが死んだのかどうか?というので意見が分かれているっぽい。わたしは生きて脱出したと信じて疑っていなかった。母と堀先生が電車の窓を開けたあと、二人が見た車内の映像があまりにも暗くてよくわからなかったというのもあるかもしれない。窓の泥を払っても払っても中が見えるようにならない、というのを車内から映しているカットが美しくて好きだった。